45分でめぐる『銀河鉄道の夜』のこと(吉川和夫)
2014-08-19


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 こんにちは。作曲家の吉川和夫です。

このたび、45分でめぐる『銀河鉄道の夜』を、せんくら・うた劇場として演奏することになりました。公演は105日(日)11:4512:00、エルパーク仙台ギャラリーホール(公演番号65)です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 ご存知のとおり、「銀河鉄道の夜」は宮澤賢治の代表的な作品です。ジョバンニ、カムパネルラという二人の少年が、「ほんとうの幸い」を求めて銀河を旅する、美しくも哀切な物語…。ところが、題名はよく知っているけれど、実はちゃんと読んだことがないという声もよく耳にします。特別難しい言葉が多いわけではありませんが、イメージがあまりにも壮大かつ自由に広がっていくため、ついていくのに苦労する面が、もしかしたらあるのかも知れません。

 

 その「銀河鉄道の夜」を合唱劇にしようと考えたのは、合唱団じゃがいもの指揮者・鈴木義孝さんでした。山形を拠点とする合唱団じゃがいもは、他に類のないユニークな活動で知られています。ここには子どもからおとなまで在籍していますが、おとなの合唱団に児童合唱パートが付いているのではなく、高校生以下は必ず親と一緒に参加します。三世代で参加している家族もあります。そして、おとなも子どもも、同じレパートリーを歌うのですが、そんなふうに世代を超えて一緒に歌える合唱曲は決して多くありません。そこで、「新しい曲を書いてよ」という鈴木さんの要請に応えて、作曲家の林光さんや萩京子さんや私が作曲してきました。その多くが宮澤賢治を題材とした合唱劇となり、すでに20作品を越えています。合唱劇という形をとれば、子どもは子どもなりの、おとなはおとなの役割をもって活動することが出来ます。お芝居が目的ではありませんが、簡単な小道具や衣装は、みんなで手作り。加藤直さんや恵川智美さんといったプロの演出家に全体をまとめてもらいます。じゃがいも版の合唱劇「銀河鉄道の夜」を演出してくださったのは、故・山元清多さんでした。学生の合唱団のように、声が均質な合唱の美しさとは違って、多世代の声が混じる歌声もなかなか良いものです。

 

 合唱団じゃがいもが、満を持して「銀河鉄道の夜」を合唱劇として制作し、山形と仙台で上演したのは2007年のことでした。名だたる名作への挑戦なだけに、私も合唱団も覚悟を持って取り組みました。しかし、原作は文庫本で60


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[せんくら・うた劇場]

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